
MDSの免疫病態として,遺伝子異常を起因とする,異常細胞を排除しようとする免疫反応による腫瘍性疾患としての考え方と,免疫異常を原因としたMDSの一群としての考え方がある。本セッションでは,MDSの病態と免疫異常の関与について,さまざまな立場からレビューが行われた。

G. Mufti先生は,MDSについて,まずファーストイベントとしてgeneticな異常が起こり,その結果生じた異常細胞を排除する免疫応答がその本質であると捉え,MDSの病態形成においてその原因を担う免疫異常について概説した。
MDSでは自己抗体の存在,免疫グロブリンの上昇,TNFα,IFNγ,TCFβ,FasLなどのサイトカインの上昇,T細胞subsetの異常など多彩な免疫異常が見られる。特にoligoclonalなCD8細胞がみられるが,これは分化抑制とアポトーシスの亢進を通じて,骨髄の前駆細胞の減少をもたらすと考えられている。また,免疫抑制療法が奏功した場合,このoligoclonalityは無くなる。これまで免疫抑制療法の適応を考えるうえで,若年者,HLA-DR15,骨髄低形成などが指標として用いられてきたが,今後はこのようなサイトカインやT細胞分画の異常の有無を考慮に入れるべきであると説明した。
さらに,これらの免疫異常はMDSの病期によって異なる特徴を有する。すなわち低リスクのMDSでは,IL-7,IL-12,IFNγなどの向炎症性サイトカインの分泌が亢進し,CD4+細胞は自己免疫性のTh17が優位である。一方,高リスクMDSではIL-10などの抑制性サイトカインの分泌が亢進し,CD4+細胞は抑制性のTregが優位となる。これは低リスクMDSでは免疫が腫瘍細胞を除去する力が働くが,高リスクMDSではその力が抑制され,腫瘍が免疫系の監視をエスケープしていると考えることができる。
P.K. Epiling-Burnette先生は,免疫抑制療法が有効であったMDS患者に観察される免疫異常の特徴を調べ,その病理学的な意味を解説した。低リスクMDS患者は, CD4+/CD8+細胞比の低下,クローナルなT細胞の出現,Th17の増加,Th1サイトカインの上昇など,さまざまなT細胞の異常がみられる。同先生はこの中で,CD4+細胞の低下が最も重要であるとして,これは制御性T細胞の低下を通じてeffector T細胞の活性亢進につながると説明した。
低リスクMDS患者ではT細胞受容体repertoireの減少が見られることにより,何らかの腫瘍抗原が存在していると考えられるが、特定には至っていない。T細胞は通常,胸腺からnaïve T細胞が産生され,effector T/terminal memory T細胞へ分化していくが,免疫抑制療法に反応した患者は,無治療時にはnaïve T細胞が減少し,effector T/terminal memory T細胞が増加していた。effector T細胞はMDS細胞を攻撃するばかりでなく,TNFαやIFNγなどの液性因子の分泌増加を通じて正常細胞にもアポトーシスを誘導し,無効造血をもたらす。これに対して免疫抑制療法で用いられるCsAとATGは活性化T細胞を抑制し,レナリドマイドはnaïve T細胞の増加をもたらすことで,ホメオスタシスを正常化する。実際に免疫抑制療法が奏功した患者は,naïve T細胞の増加とeffector T/terminal memory T細胞の減少がみられた。しかし,高齢者では胸腺機能の低下によってnaïve T細胞の増加がみられないため,免疫抑制療法が奏功しにくいと考えられた。
このように一部の患者群では,T細胞のホメオスタシスの異常を通じて無効造血が生じており,免疫抑制療法の良い適応になるといえる。
低リスクMDS患者には非クローン性の免疫異常が原因である一群が存在する。そのため,「MDSは造血幹細胞のクローン性疾患である」という概念の変更の必要性が提唱された。
中尾眞二先生は,免疫異常を介するMDSの中には,抗癌剤ではなく免疫療法が奏功する一群が存在することをふまえ,これらの患者群を同定し適切な治療を行ううえで,診断マーカーの必要性を指摘した。
高感度フローサイトメトリーによって検知するPNH血球(CD55-およびCD59-)は,免疫異常を原因とするMDSを判定するうえで信頼できるマーカーである。PNH血球存在比が0.003%以上を「陽性」と定義すると,PNH血球陽性は不応性貧血(RA),多血球系異形成を伴う不応性血球減少症(RCMD)患者の20%に認められる。一方,その他のMDSサブタイプでは認められない。PNH血球陽性患者は,PIG-A遺伝子の変異がさまざまな系統の血球に見られ,HUMARA assayによる顆粒球clonality が認められない,DRS1やmoesinなどの自己抗体が存在するなどの特徴がみられる。また,PNH血球陰性患者に比べて,CsAやATGを用いた免疫抑制療法に対する反応性が良好であるが,PNH血球は治療後も1年以上残存することが知られている。
免疫異常を原因とするPNH陽性MDS患者は,低リスクMDS患者とは区別すべきサブ集団であり,異なる治療アプローチが必要と考えられる。また,高感度フローサイトメトリーはPNH血球の微小な成分の検出が困難であることから,汎用性の面で課題もある。
N. Young先生は,免疫骨髄不全にテロメア異常が原因の一群が存在するという点を指摘し,テロメアの短縮だけではAA/MDS症候群とはならないが,免疫異常が加わることで表現型が確立することを紹介した。
AA/MDS症候群の原因の1つとしてtelomere伸長遺伝子群の先天的変異によるテロメアの短縮が存在する。テロメア短縮は,ゲノム不安定性をきたしてMDSやAMLの原因や,さらに幹細胞の数的減少をきたし,AAの原因となりうると考えられている(図)。事実,テロメア短縮を有するAAではMDSへの進展が多く認められ,MDSでは免疫抑制が奏功した場合においても再発やAMLへの進展が多い。
しかし,テロメア短縮が直接的にAA/MDSなど骨髄不全の発症原因になっているわけではない。遺伝的にTERTなどのtelomere伸長遺伝子群の変異を有している場合においても骨髄不全は発症せず,他の機序が必要と考えられる。telomere伸長遺伝子群の変異を有している例では,多くのAAと同様にT細胞免疫異常(oligoclonal CD8 T細胞)が認められることから,テロメア短縮によるAA/MDSなど骨髄不全の発症機序に,免疫異常の関連が推測されている。このような発症過程が根底に存在するため,テロメア異常をもつ患者群では免疫異常の寄与は限定的であり,免疫抑制に対する反応が持続せず,核型異常を有するMDSやAMLに進展する傾向があり予後不良に繋がると考えられる。
一方では,テロメア異常を原因とするAA/MDS群は,免疫異常を原因とするAA/MDS群とは排他的な集団であるという意見もあり,慎重な検討が必要である。